こんにちは、「あまの苔屋さん」の髙岡です。
あなたは、過去の誰かの想いが宿った“もの”に、そっと触れたことがありますか?
この記事では、岡山の仏具再生プロジェクト『RinNe』と苔テラリウムが出会い、
生まれた一つの作品について綴ります。
命が終わっても、想いは終わらない。
その循環のかたちを、苔がそっと教えてくれました。
仏具再生プロジェクト『RinNe』との出会い
きっかけは、僕の師である兵庫テラリウム協会・増田真人さんと、仏具再生プロジェクト『RinNe』のスタッフとの出会いからでした。
『RinNe』は、岡山市の仏具店・照泰仏道さんが行っているプロジェクトで、役目を終えた仏具に新たな命を宿し、“暮らしの中の祈り”として再生させていく活動です。
苔リトリートツアーに個人として参加したことをきっかけに、苔と仏具という一見遠い世界が、静かに手を取り合いました。
仏具の美しさ、そこに込められた祈り。
僕も以前から関心を持っていたテーマでした。
だからこそ、お話しをいただいた時に、すぐに「やりたい」と即決しました。
苔を通して、再生や復活、続く想いというストーリーを描けるかもしれない──そんなワクワクした直感が走ったのを覚えています。
「36(みろく)」さんの詩と、苔テラリウムの融合
共作のお相手は、アーティストで詩人の「36(みろく)」さん。
仏具をシンプルでやわらかな雑貨のように再生する独特の感性。そして、日々Instagramで綴られている詩の数々。
彼女の作品を見た瞬間に、「この人となら、一緒に感情を表現できる」と感じました。
*64ノオト(mushinooto)ぜひご覧ください
僕が選んだ詩は、「生まれ、生きること」という一篇です。
生まれ、生きること
なぜここに生まれたのか
その場所を選んで生まれると言うが
本当なのか何度も生まれ変わると言うが
本当なのか記憶もない
答えも見つからないが私はただ
今を大切に
生きるだけ
この詩にインスパイアされた僕は、
仏具・詩・写真・苔をひとつの物語として融合させたテラリウムを作ることに決めました。
あなたはこの詩を読んで何かを感じましたか?
一つの仏具が、二つの命になるということ
今回の作品は、仏具を「蓋」と「台座」に分け、
それぞれをテラリウムとして独立させる構成にしました。
蓋は“未来”を、台座は“過去”を象徴し、
その中に宿したのは、三種の苔です。
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プレミアムモス
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オオハシラガゴケ
-
カサゴケ
それぞれまったく異なる性質を持ち、成長の仕方も、光の浴び方も違います。
けれど一つの器の中で共存し、時間とともに静かに変化していく。
それはまるで、人の感情や生き様そのもののようだと感じました。
これは風景ではなく、「感情」を描いたテラリウムです。
通常のテラリウムは、自然の“情景”を再現するもの。
しかし今回の作品は、“感情”をそのまま苔に託すことを目指しました。
喜び、迷い、哀しみ、そして、いのち。
目には見えない心の流れを、
葉のうねり、苔の湿り気、光の加減で表現できないかと、
何度も、何度も、苔を置きなおしました。
これは、心象風景を描いたテラリウム。
作品に触れた方それぞれの感情と、静かに響き合うことを願っています。
祈りではなく「今と未来」を映す場所として
仏具といえば、誰かへの祈りを捧げるもの──
そう捉える方も多いかもしれません。
でもこの作品で僕が描きたかったのは、
祈りではなく、“今ここを生きる自分”と“これからの未来”。
再生された仏具と、苔という「生きている存在」が出会うことで、祈りのかたちも、少しずつ変わっていく気がしています。
この作品に込めた2人の想いを綴った動画を作成いただきました。
感性の循環としての“再生”を信じて
この作品は、2025年大阪・関西万博の展示作品として制作されました。
再生された仏具の赤、詩と写真の青、そして白。
色彩を通じても、万博のテーマとも通じる
「生まれ、生きること」というテーマを織り込みました。そこに、苔の緑が加わります。
再生とは、単なる修復ではなく、感性の循環。
過去から今へ、そして未来へ──
想いを、やさしく手渡していくこと。
このテラリウムが、出会った誰かの「今」を照らし、
これからの生き方を静かに見つめるきっかけになればと願っています。
この作品だけではなく、今後も36さんとは
これからも新たな創作活動を行う予定です。
僕の他にも素敵なアーティストたちのコラボレーションを見ることができます。
ぜひRinNeのホームページをご覧いただき、その思いに触れてみてください。
今日も最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
また、静かに自然に触れたくなったらここへ戻ってきてください。
苔のように、静かに、お待ちしています。
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